プロローグ

~さよならあかね色の自転車~

今日自転車を捨てた
学生時代初めて買った本格的なツーリグ車だった
ワインレッドのその車体から、あかね号と名付けた

こいつに乗って色々なところにツーリングに出かけた
初めて県外へ出たときの感動と不安
途中何度も足を着きながらも自分の足で登った峠の頂

旅先で見知らぬサイクリストと交わした短い会話
自転車を通じて友達も増えた
自転車の楽しさを教えてくれたのはこいつだった

就職してからしばらく通勤に使用していた時期もあった
雨の日も風の日もしっかり走ってくれた
今思えばこの時期に随分消耗させてしまった

しばらくして、クルマを買ってからは乗ることもなくなり、ガレージの片隅で埃をかぶった
やがてロードレーサーを手に入れてからは、その存在すら忘れていた

あれから約25年
息子が自転車に乗ると言うので再び整備した

そして、家族全員でサイクリングに出かけた後、フロントフォークのカンチ台座が折れてしまった
どうする事もできず諦めるしかなかった

しかし、再びこいつに乗って家族全員で走る事など想像もしていなかった
最後の最後にこんな自転車の楽しさも教えてくれたのか
お前と一緒にあちこちに残した轍は、私の思い出の中で決して消える事はない

ありがとうあかね色の自転車
さよならあかね色の自転車

2010年4月 WPC掲載記事より