【復刻記事シリーズ】
この記事は 2009年9月に投稿した記事の復刻版です。
文学散歩ならぬ文学ポタリングへ行って来ました。
小学校の教科書に載っていた新美南吉の「ごんぎつね」というちょっと悲しい
童話を覚えているだろうか。
その童話の舞台となった場所は、愛知県半田市岩滑(やなべ)周辺。
秋になると勝川の土手には、200万本の彼岸花がじゅうたんの様に真っ紅に
咲いていて、まるで童話の中にいるような錯覚さえ覚える。
童話を読んだ事のない人も、土手に植えられた200万本の彼岸花には
圧倒される事だろう。
以前、歩いて「ごんぎつね」の世界を訪ねた事はあったが、歩くには広すぎて、
矢勝川周辺をうろついただけで終わってしまった。
今回は、自転車で回ることでそのエリアを広げようと思う。
新美南吉記念館前の駐車場は、秋まつりの時期は満車なので、
少し離れた「半田運動公園」へ車を置いて、
そこで自転車を下ろしてスタートします。
岩滑方面へ向かう途中のサイクリングロードからは、
稲刈りを終えたばかりの田んぼの風景が広がっていました。
秋まつりのメイン会場前あたりは、
彼岸花を撮影したり見物する人たちで、にぎわっています。
矢勝川堤防の片側は、サイクリングロードになっています。
さて、文学ポタリングと言う事なので、新美南吉の「ごんぎつね」の世界を
想像しながら、童話に書かれている文章と実際に目の前に広がる風景を
オーバーラップさせて行きます。
兵十が、病気のおかっさんにうなぎを食べさせようと、
はりきり網を仕掛けたのは、このあたりなのだろうか。
南吉が子供の頃よく遊んだといわれる常福院。
童話「ひよりげた」の舞台となった。
南吉の生家。
南吉が亡くなる2ヶ月前まで、ここで童話や小説を書いていた。
矢勝川から見た権現山。
童話の中で、ごんぎつねが住んでいたとされている山である。
早速、権現山へ向けて自転車を走らせます。
ごんげんさんと呼ばれる「五郷社」の長い階段を上って行くと、
権現山の中腹まで上がることができる。
薄暗い階段を上っていくと、突然目に飛び込んでくる真っ紅な彼岸花。
何だか彼岸花というのは、淋しげに見えるのは私だけだろうか。
「五郷社」の境内の片隅に居るごんぎつね。手作りぽい愛嬌のある狐である。
秋まつり会場とは対照的で、ここは誰も居なく、ひっそりとしていた。
権現山から岩滑方面を見た風景。物語の中のごんぎつねは、
こんな風景を見ていたのだろうか。
堤防の彼岸花の紅が微かに見える。
ここは南吉の養家である。養子として当時8歳の南吉は、
ここで祖母と二人きりで生活するが、寂しさに耐えられず、
父親と継母のもとに戻る事になる。
物語の中で、ごんぎつねが隠れて様子をうかがったとされる六地蔵が、
南吉の墓のある墓地の片隅に移されていました。
そして、文学ポタリングの最後に南吉の墓を訪れました。
南吉の墓は、一般の人たちと同じ墓地の一角にひっそりと立っていました。
残暑厳しい9月の中旬。お墓の前でそっと手を合わせて来ました。
そのとき、何かが、林の陰からこちらを伺っているような気配を感じました。
今回のポタリングで感じた事は、童話「ごんぎつね」の世界はそれほど
遠い昔の事ではなく、私自身の想像と空想の風景が目の前にある現風景と
一致して、童話の中にいるような感覚させ覚えました。
今では、狐はいないのかも知れませんが、南吉が見た風景は、
今もここに残っている事は確かだと感じました。
今年(2013年)は新美南吉生誕百年の年にあたります。
新美南吉の童話の世界を散歩してみてはいかがでしょうか。
おすすめポタリングルートはこちら。
(半田運動公園スタート/ゴール)
終わり
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